朝食:ガン研内のドトールで(レタスホットドッグ コーヒー)
昼食:船橋東武デパート地下の「青葉」でラーメン
夕食:「浦霞純米吟醸 禅」ぬる燗 野菜の白醤油和え(シラス、水菜、ネギ、大根) 

 千葉駅で停車中の8時55分発の総武線の電車に乗っていると、まだ中学生だろうか、少女が二人乗りこんできた。一人は真っ赤なエナメルシューズに白デニムのつなぎ姿、唇には同色の真っ赤なルージュをひいている小柄な子、もう一人はテレビに出ている子役など問題にならないほどの美形。そのままビスケットのCMに即つかえそうだ。二人はお互いに写メを撮りあったり、それを見せ合って笑い転げたりして楽しそうだ。つなぎの子がダンスでも習っているのか、パントマイム風の動きをリズミカルにとる。上手だ。二人をみていると、まるで森から出てきたリスの可愛らしさと、愛嬌を感じてしまい、目がはなせなくなる。そのままイヤホンを耳からぶら下げて、サザンの「エロティカ・セブン」をリピートにして聴き続けた。

 〈夢の中身は風まかせ 魚眼レンズで君を覗いて
  熱い乳房を抱き寄せりゃ 自分勝手に空を飛ぶ

  惚れたはれたの真ん中で 電気ショックを味わいながら
  濡れた性ほど妖し気に 五臓六腑を駆けていく

  恋人同士だから飲む ロマンティックなあのジュース
  涙をみせぬよう生きていたいだけさ〉

 二人は船橋まで一緒だった。私は東武野田線に乗り換えて柏に向かった。ちなみに船橋駅の名前の由来は、〈「吾妻鏡あがつまかがみ」に「下総国院領船橋御厨(みくりや)」と記述されているのが、文献にあらわれた最初です。日本武尊(やまとたける)が東征した折りに、「海神」に神社を建立し、戦勝を祈願。その甲斐があって戦に勝ち「お礼参り」をしようとした折り、大洪水で行くことができなかったのを、舟を橋のように並べて渡ったことから「舟(船)橋」となりました。〉とのこと、へぇ。

 来るときの総武本線も比較的すいていたが、東武野田線はもっとすいていた。雲一つなくはれ上がった空の下、田園地帯のなかに新興住宅が混じったという開発途上地の真っただ中を一駅ごとに停車しつつ進んでいく。ふと眼を上げると、正面に乗り込んできたサングラスをかけ、EDWINのキャップをかぶったオジサンが、いかにもブックオフで買いましたと言わんばかりの文庫本を開いて読み始めた。表紙には「だって欲しいんだもの!」(中村うさぎ)とカバーもしていないので読み取れる。朝っぱらからこんな本読むか?路線が変わると乗客も変わる、の典型。

 〈抱きしめて私は喉がカラカラ そんな愛こそすべて 
  女は女夜もバラバラ 我はエロティカ・セブン

  黒い悪魔がやってきて ハード・コアな気持ちにさせる
  一度キメたら止められぬ 中途半端な不良じゃない

  もう一度だけ二人にして 殺し文句のフルコース
  奥歯も凍るようなキスをしたいだけさ

  誰よりも私は私 命からがら
  愛の嵐の中で 女は女変身てギラギラ
  いつかは燃えるような恋をしたいだけさ〉

 電車は柏駅に着いた。バスに乗り換え、ガン研へ向かう。途中の柏の葉公園通りの街路樹が見事に黄葉して、どこまでも続くバス通りを埋め尽くしている。陽光に照らされキラキラ輝く様は、まるでインカ黄金文化の黄金のようではないか。とても気分が晴れやかですがすがしい。昨日決断した断捨離も一つは要因になっているかもしれない。残りの時間は少ない我が身なのだ、不要な縁などまったく必要ない。とっとと切るべきだったのだ。そのせいなんだろう、とても気分がいい。車窓から眺めると、目の前に広くて希望という名の新しい道が開けていた。

  〈魅せられて地獄の果ては 恋路の都
  堕ちたアダムとイブか 刀を剝いた夏の淫獣
  真面と狂気のヘブン

  抱きしてめて私は私 喉がカラカラ
  そんな愛こそ好きさモンスター
  女は女 夜もバラバラ 我はエロティカ・セブン〉

 病院へ着いた。血液検査は4本で、若い太った女性看護師さんだったが明るくて採血の注射も上手だった。そう伝えると喜んでくれる。腕を差し出したら青なじみになっている注射痕をみて、大分採血されていますねというので、ボクの血管は細くてねじ曲がっているんだそうだよ。なので結構一度でダメな時もあってその結果青なじみに残ったのかな、とつぶやいた。すると、ううんねじれてませんよ、細いだけですという。じゃ、ねじれているのはボクの根性だけかといって二人で笑った。採血の間中、彼女から採血あるあるを聞きながら二人で大笑いをした。もしかしたら大勢が採血をしている採血室での大笑いはチョイ不謹慎だったかもしれない。

 その後、治験管理室のIさんにその話をしてそこでも大笑いをしながら盛り上がった。さて担当医師の診察の結果、とくに異常もないので来週点滴治療を行うことに決まった。午後、2時に病院をでた。船橋駅東武デパートの地下1Fで毎度の「青葉」のラーメン。暖簾をくぐっただけで鰹出汁のいい香りが鼻をつく。鼻水たらたら流しながら完食。食材を少々買い物をして家に戻った。